190人が本棚に入れています
本棚に追加
何かが沢山走っているような音と、埃っぽい空気で目を覚ます。最初に飛び込んできたのは草ーーそして暗闇。
気がつけば俺は、知らない場所に突っ伏していた。
「痛っ……」
どうやら頭を打ったらしく、鈍く走り抜ける痛みに顔をしかめる。由希は、手紙は!? 右手で頭部を軽く押さえながら周辺を見回す。
辺りに由希の姿はなかったが、肩にかけた鞄はそのままだ。ゆっくりと体を起こし、草むらに尻をつく。
「どこだ、ここ?」
眼前には大きな河川。いや待て、確か今まで資料館ーーつまり屋内にいたはずで、時間もまだ昼間だったはずだ。
「おぅ、ワレ! そがなとこで何しとるんじゃ?」
突然、左後方から聞こえた声。
「……えっ?」
反射的に声のした方を振り返ると、川沿いの道に少年が1人立っていた。いきなりの問いかけだったので、どう返せばいいものかと戸惑う。
現状だけで言えば草むらにしゃがんでいるのだが、そもそもここがどこなのかすら分かっていない状態だ。丁度いい、彼に訊いてみよう。
「あの……、ここはどこですか?」
最初のコメントを投稿しよう!