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制服に着替え、Tシャツと短パンをカバンの中にしまう。引かない汗を拭いていると、後ろの方も静かになった。片付けも終わったのかな。振り返ろうとすると、一瞬頬が冷たくなる。慌ててそれを確認すると、ランがアイスクリームのカップを押し当てていた。
「出る前に、これ食べよ」
蓋には大きくアボカドが描かれていて、自分の顔が歪んだのが分かる。
「何それ」
「ちょっと高いアイスだけど、奮発して買ってみた」
ランがベンチに座り蓋を開けるのを見て、自分も開封する。薄黄緑色の中にフリーズドライされた苺やバナナ、キウイが入っていた。
「ちゃんと果肉が入っているから、美味しいよ」
ランは一口食べにっこりと笑った。自分もスプーンで掬い口に入れる。すると、すぐに溶けて果物の甘酸っぱさが広がった。少し残った果肉を噛みしめ飲み込んでいく。
「ところで、今日は何か問題なかった?」
しばらくして、ランが話を切り出してくる。
「それがさ、また一年が色々やらかして。先輩方もお怒りでさ、全部その後始末だよ。先輩も一年も高校生なんだから、少しは冷静になってほしいよね」
半ば捲し立てるように話してしまった。けれど、ランは困ったように微笑み、
「部長は大変だね。ホントお疲れさま」
と一言添えた。なんでこんなことになったんだろう。無性にイライラして、それを飲み込むように残りのアイスクリームをかきこむ。その欠片が器官に入り、むせそうになった。それを察したランがすぐにペットボトルを握らせる。それを飲み、ひとまず落ち着いた。小さなカップはすぐに空になり、眠気から今度は欠伸をする。
「眠いの?」
「うん、ちょっとね」
カップを袋に入れたあと、少しぼんやりしていた。すると、ランは凭れかかっていたベンチに座り直し、軽く太ももを叩いた。
「膝枕してあげる」
「え、いいの?」
「もちろん。疲れてるんでしょ」
聖母のような微笑みに思わずランに近づく。隣に座り、倒れるように膝に頭を乗せた。制服の膝枕は弾力があり、意外と固い。でも、いつもの匂いや息遣いから妙に落ち着く。ランの手が頭に添えられるだけでも眠気を誘う。ふと、視界に姿見が入った。そこにはいちゃつく男女が映っている。やっぱり変だ。
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