エコー

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何処に何が在るかも知っている 危険を感じたことなど一度もない たとえ危険が迫ってきても壁の抜こうに逃げられる 壁を乗り越えれば誰も追って来れない しかし、白い猫の後ろを歩いていた白い子猫が見当たらなかった 白い猫の後ろを歩いていたはずの白い子猫の姿が見当たらなかった 白い猫が白い子猫のニオイを嗅ぐ 白い猫が前足で怯えるように白い子猫に触る だが 白い子猫は動かない 白い子猫が雨に打たれて横たわる 待っている 白い猫は白い子猫が立ち上がるのをずっと待っている ザーザーと雨が降る音がする ポチャンポチャンと雫の音がする ザーザー ポチャンポチャン 金色の瞳、金色の髪の少女 白いワンピースと白い靴が雨に濡れる 雨が洗い流す、光も闇も善も悪も洗い流す 泣いていた 真っ直ぐな瞳に浮かぶ涙を拭う事もなく 泣いていた 雨にその小さな体を濡らしながら 魔導都市に棲む全てのモノ達をその瞳の中に収めて泣いていた 木霊は知っている 魔導都市で生きるモノ達を 木霊は知っている 魔導都市で死ぬモノ達を 木霊は誰にも見えぬ涙を流し 木霊は誰にも聞こえぬ声で叫ぶ 木霊は泣き叫んでいる ザーザーと雨が降る音がする ポチャンポチャンと雫の音がする ザーザー ポチャンポチャン 金色の瞳、金色の髪の少女     
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