1/8
前へ
/70ページ
次へ

 けたたましい電子音が、部屋中に鳴り響いた。  僕は目を開けられず、頭の上にある棚を手で探る。  見つからない。  そうしているうちに電子音は、じわりじわりと大きくなっていく。 「あー、ったく!」  僕は重い体を無理矢理起こして、棚の方を向いた。  スマートフォンは、触っていた場所からはるか端の方で音と共に振るえている。  叩くように画面に触れると、部屋はやっと静かになった。  薄暗い部屋に戻った静寂は、僕の瞼をまた重くする。  ダメだ、ここで目を閉じたら二度寝する。  僕は瞼に力を込めて、ベッドから立ち上がる。  部屋に充満する眠気を晴らすため、僕は力を込めてカーテンを開けた。  窓からもたらされた眩しい光と、夏特有の熱気が伝わってくる。  今日も暑くなりそうだ。 「さぁ、着替えるか」  僕はスマホの隣にあった、5センチ四方の白い箱をつまみ上げる。  見た目より重い箱を手の上に乗せ、上面のボタンを押した。  ブンという音と共に、空中に ――HELLO!  という文字が浮かび上がり、続いてLOADINGと表示される。 「最近スキンを入れすぎて、立ち上がるのが遅いんだよな」     
/70ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加