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霧浜駅に降り立つと、ジリジリと午後の強い陽射しが照り付けた。
スキンはシンプルなTシャツに短パン。
涼しそうだが、リアルな暑さには効果はない。
僕は、影になっている駅の券売機の端に陣取って、メインストリートを眺めていた。
ゆらゆらと立ち登る陽炎といつも以上にのろのろと歩くスキン達。
先日見た光景とそう変わらないが、そこには颯爽と歩く人影はない。
それでも僕はそこを動かなかった。動けなかったのかもしれない。
――あの子をもう一度見たい。
それが僕の衝動だった。
だが、結局彼女を見ることはなかった。
ようやく諦めがついたのが、駅の明かりが薄暗くなったストリートの石畳を照らしだしたころだ。
これくらいは覚悟していたことだったが、僕の足取りは重かった。
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