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ただいまも言わずに家の玄関を開けたが、すぐさま母がやってきた。
「あら、遅かったじゃないの」
僕はうんとだけ言って、成績表を渡した。
ダイニングからは揚げ物の匂いと不二山テクノとやらの盗難事件を伝える無機質なキャスターの声が聞こえた。
すぐにご飯よという声が背中から聞こえたが、僕はそのままダイニングを素通りして2階の自分の部屋へと戻った。
ベッドに思いっきり寝転がって目を閉じた。
颯爽と電子の皮膚たちの間を抜けていく、少し焼けた生身の肌。
なぜかそれが脳裏にくっきりと焼き付いていた。
ちらりと見えた顔には、そばかすもあった気がする。
何で僕はこんなにあの子に固執しているのだろう。
スキンを付けていないなんて、今どきダサいはずなのに。
頭ではそう分かっていても、彼女の姿を思い出す度に鼓動が早くなるのを感じる。
遠くから母の声がする。
また明日駅に行ってみよう。
僕は起き上がって、1階へと降りていった。
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