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少しだけ乾いた体が潤った気がする。
「何やってるんだろうな」
口をぬぐった後に、そんな言葉が自然と漏れた。
見つかるか分からない女の子捜しとは、我ながら滑稽だ。
スキンの裏で自嘲気味に笑う。
僕は見慣れたメインストリートから目を離し、何気なく改札口と向けた。
ちょうど電車が着たようで、たくさんのスキンたちが出てきていた。
その中に金髪のポニーテールが見えた。
急ぎ足で移動する彼女にに合わせて、不規則に揺れ動いている。
――彼女だ!
僕は慌ててリュックを背負うと、ストリートへ向かった。
既に金の尻尾は、雑踏の中へ移動している。
なんて早足なんだよ!
スキンがギリギリ投影できるスピードで歩く僕は、彼女にどんどん離されていく。
そういえば、今何時だ?
彼女から目を離し、スマホで時間を確認すると11時過ぎだった。
先週見かけた時間より、かなり早い。
今まで午後に探しに来ていたが、もしかして普段は午前中にここを通るのだろうか。
そんなことを考えて画面から顔を戻すと、追っていたはずの彼女の姿はもうどこにもなかった。
「早すぎだろ……」
僕は歩くスピードを緩めて、カフェの壁にもたれかかった。荒くなっていた息を、深呼吸して整える。
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