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挑発するようにゆっくりと動くローディング画面を横目に、スマホのスケジュールアプリを立ち上げた。
今日の予定に、“ミクリと霧浜”と表示されている。
「今日は、ミクリの好みに合わせるか」
軽い電子音が鳴って、3Dグラフィックの人間が浮かび上がる。
僕は、それを小馴れた手付きで左へとスライドさせる。
カジュアル、セレブ、ストリート……。
タイプの違うキャラクターたちが目まぐるしく流れていく。
そして僕の指は、サマージャケットをメインとした”夏エレガント”と書かれたキャラクターで停まった。
「よし、これだ!」
僕は、部屋着から無地の白Tシャツと綿パンに着替え、箱の角に付いていたチェーンをベルトホールへとかけた。
そして、もう一度、箱のボタンを強く押した。
――ENJOY!
僕の体を強い光が一瞬覆ったかと思うと、目の前にあった鏡には3Dグラフィックに映っていた
大人の雰囲気漂うサマージャケットの男が佇んでいた。
「さて、朝ご飯でも食べてくるか」
鏡の中の3Dグラフィックの男は、僕の声に合わせてぱくぱくと口を動かし、階段を降りていった。
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