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 今やこの国のほとんどの人間がスキンを付けていると言っても過言ではない。  今見ているテレビの中のキャスターですら、スーツ姿のスキンを付けてニュースを伝えている程だ。  付けていないのは、時代についていけないうちの両親みたいな人間か、スキンが禁止されている職業に就いている人間ぐらいだろう。  スキンの出現で、洋服を売る店も美容院も激減したと言っていた。  そりゃそうだ。  そんなことしなくてもスキンでいくらでも変えることができるんだから。  生身で歩くなんて、時代についていけてない“ダサい人間”だと、自分で吹聴して回っているようなものだ。  考えただけでも寒気がする。 「ふーん、そういうもんか。大変だな」  再び父はタブレットに集中し、母はキッチンへと戻っていったので、僕はテレビへと視線を戻した。  が、ニュースはステルススキンを開発に成功したというニュースを、にこやかな表情に変わったアナウンサーのスキンが伝えているだけだった。
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