デジタルの皮膚

１

　僕らは足早に待ち合わせしていた霧浜駅の外に出た。
　太陽を手で遮りながら、目の前にそびえるタワーを見上げる。

　これが話題の霧浜タワーか。

　霧浜駅周辺は、数年前から再開発をしていて、ようやく今年すべの施設がオープンした。
　目玉がこの霧浜タワーで、高さはスカイツリーに劣るものの、周りに高層マンションがないから、眺めが抜群なんだとか。
　夜遅くまで営業していて、ロマンチックな夜景を観ることができるらしい。
　僕もそれ狙いだ。
　ミクリにそれを見せればきっと……なんて、下心がむくむくと沸き上がる。

　高台にある駅から階段を降りていくと、眼下には小洒落たカフェやレストランが所狭しと並んでいる。
　ここが霧浜ストリート。SNSでしょっちゅう見かけるオシャレなストリートだ。

「あのカフェ、ここが日本初出店らしいよ」

　ミクリは、スマホを見ながら入口にあるカフェを指差した。
　駅側がガラス張りになっており、カフェのロゴらしいコーヒーカップの中にちょこんと入ったブタのイラストが大きく描かれている。

　土曜のストリートは、道幅いっぱいに人が溢れ、ゆったりと流れていた。
　休日だからというのもあるが、スキンは早く歩くとうまく投影されない。