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製の機関部。一般的なライフル銃と違う。
歴史の教科書や時代劇でよく見る形の銃だ。
「火縄・・・銃?」
店主は説明を加えて答えた。
「火縄銃じゃないよ、管打ち銃だ。」
聞きなれない言葉に良太が繰り返す。
「管打ち銃、ですか?」
「そう。縄じゃなくて雷管っていうキャップをつけて火花で発砲するんだよ。コイツも幕末期のものだよ。」
店主の説明がいまいち飲めなかったのか、銃に興味が薄いのか良太は取り合えずといった様子で額を尋ねた。
「十五万だな。古式銃に銘、無銘は関係なくてね。コイツは無銘なんだけど、管打ち和銃は人気がないんだ。」
こんな銃がねぇ・・・と、隅にある埃被った目立たない銃を見下ろした。
数秒眺めたが、十五万という微妙な値段と刀でないからか購入意欲が湧かず店から出ようと玄関へ歩き始めた。
靴を履き、店主へ挨拶をしようとした時だった。
良太の耳に声が、近くで囁かれるような、テレパシー即ち脳内に介入してくるような、そのような感じだ。
「青年よ、俺を買え。」
声がした方向へ顔を向けたが、店主以外誰かがいるはずもなく、周りは骨董品だけだ。
気味悪く感じたのか挨拶をすぐに済ませ店から出て行く。
また夏の灼熱に身を投げた。
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