イノセント

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僕は調べた。 先の戦争が起きていた頃、世界はインターネットというものを駆使していた。人々はお互いを糾弾し合い、監視し合い、社会を分断するような争いが毎日のように起きていた。 揚げ足を取り合い、外野の人間はそれを囃し立て、過去の失敗や不祥事をいつまでも忘れなかった。何とも水捌けの悪い息苦しい社会だったようだ。 今から思えばインターネットの存在は夢のようだ。もっと良い使い方もできたはずだ。しかし人々はそれをうまく使いこなせなかったらしい。 人々は争った。扇動し合い、デマを拡散し合い、差別を助長し、お互いを傷付け疲弊させた。 その結果、人々は簡単につながる手段を捨てた。世界中の誰とでもつながり、匿名でやりとりするのではなく、身近な隣人とより深くつながり、お互いの顔を見る社会にしようと試みた。 僕が生きているのは、そういう社会だ。僕らは、自分の国にいながら他国の人とつながる方法を知らない。 だが僕らには言葉がある。幼い頃から学び続けている外国語を操って、他国の人々と出会い、隣人になることができる。実際に会って話す方がよほど簡単だし、僕にとっては楽だ。
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