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それで私は特攻を免れた。
戦争が終わってみれば、あのとき尻込みした仲間たちも、安堂教官もみな空へ散華し、一機たりとも帰ってはこなかった。
志願したはずの私だけがおめおめと生き残ってしまったのだ。
私は、なぜ生きているのだろう。
傍にはいつも愛する妻がいて、三人の子がいて、幸せで、それなのに、あのとき散った仲間たちにはーー安堂教官には、そんな未来は来なかった。
生かされたのだ。皆の礎の上に立って、私の身体はギリギリのところで生を繋いだのだ。
夏の声を聞くたび思い出す。
飛び立つ前の仲間たちの清々しい微笑みと、共に語らった教官の笑顔、私を力強く殴った時の、その目尻に浮かんだ確かな光を。
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