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ふっこちゃんが行ってしまうと、後にはまた夏の声。
教官、そちらにもこの声が聞こえますか。
みぃんみぃんと鳴り響く夏の日差しのなかで、私を生かすために振るって下さった、優しい優しいあなたの拳。そのお気持ちを、私は生涯忘れることはないでしょう。
私が子らに命を繋ぎ、そらきっと今頃は、三人して観音堂の前に並んでとうもろこしを噛っている。歯を黄色くさせて、熟れた実を飛ばして元気に笑い合う、そんな今の幸せがあるのはみんなみんなあなたのお陰なのです。
ありがとうございます。ありがとうなんて言葉じゃ足りないくらい……。
ぱち、ぱち、橙色に揺れる焔の中に、ひとりひとりの仲間の顔が浮かんでは消えていく。
私と同じように、寺の跡取りになるはずだった若者もいた。
蝉の声は悲しい。
けれど、私を無量の感激に包み込む。
安堂教官。
いつか私がそちらへいったら、真っ先にあなたの笑顔に会いに行きます。
きっとまた二人で旨い酒を飲みましょう。
その日まで、どうぞ安らかにーー。
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