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「ちょっ!何してんだよ!」
「まぁ見ていろ」
剣を引き抜くと案の定、傷跡から血が流れるが、すぐに血が逆流して傷口も塞がってしまう。今度は剣をライトに握らせて剣先を手で握りわざと傷をつくるが、先程とは違い瞬時には治らず血が流れている。
「自分では傷をつけられないが、勇者ならこうやって簡単に傷がつく。まぁこの剣では刺しても致命傷にはならないが」
軽く切り傷が出来た手のひらを見てディベールは嬉しそうに笑みを浮かべる。その様子にライトはどことなく違和感を感じるが、それも具体的になんなのかはわからない。ディベールは自分に治癒魔法をかけて傷を癒す。その様子を見つつライトの中でいくつか考えが過ぎるが今は何も考えないようにしようと剣を鞘にしまう。
「不自由な体だな」
自称魔王であり本物だと断定できる材料もない今、彼の言う弱点が本物なのかもわからないため鵜呑みにするのは早合点である。本物だとあまり思いたくもなかった。
「もう慣れた」
ディベールは手についた血を自分の服で雑に拭うと貰ったリンゴをひとかじりする。
「美味いな…勇者、これはなんという食べ物だ?」
「え?リンゴだけど」
「ほう、リンゴか…なかなか美味い」
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