身勝手な駆け引き

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「王都に討伐依頼したが一向に来やしねえ…もう一ヶ月以上こんな感じだ。勇者と名乗る奴も来たが戦いに出たきり行方不明になった」 思ったより深刻な現状にディベールが後ろにいるライトに顔を向け、まるでどうするんだ?と問うように目で訴えてくる。 ライトはディベールの視線に気が付くと腹をくくり店主の前へ出る。 「この街はもうダメだ。魚も取れなくなってるし人も寄り付かねぇ」 「俺たちが何とかします」 財布から指輪の代金を出すと、ライトがカウンターにコインを置く 「その水中呼吸の指輪下さい」 「勇者、何故全額払うんだ?」 「何でって…半額はお前が勝手に言い出した事だろ?」 「それでは条件にならん」 カウンターに出したお金を半額鷲掴みするとライトに強引に渡そうとするが、そのディベールの手を握ってカウンターに戻そうとするライト 二人の押し問答を眺めていた店主は少し困ったような表情を浮かべる 「兄ちゃん達、本気なのか?」 事情を話しても止めそうにない二人に店主は茶化すのをやめて問いかける。どう見ても勝機などなさそうな二人。 初心者が装備する鉄装備を身につけたひ弱そうな男と、長い銀髪にジャージ姿の男。どうみても強いとは思えない。 「本気だ。さっさと指輪を寄越せ」 店主は指輪を取り出すとカウンターの上に置く。ライトが手に取り左の人差し指にはめる。 「よし、行こう」     
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