第一話 魔法《ミャホー》のちくわ

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耳が痛い。今日も先生に怒鳴られてしまった。 高校に入学してからというもの、何をやっても上手く行かない。 中学から友達も減った気がして、孤独感(コドゥクカン)を抑えるのに必死だった。 教室では同級生に「暗い」「闇を抱えてそう」「今世紀最大の陰キャ」 とバカにされ続け、学校に行くのが辛い日々が続いていた。 中学生の頃はこのキャラで通っていたが、高校では別格だった。 一切このキャラが通じない。 周りの視線も気になり、長い前髪を切ることさえできない。 ほぼ毎日先生にこの前髪で注意されてるというのに。 家になんて帰る気にはなれない。 学校の玄関をまっすぐ進み、家とは反対の方向を何度も曲がった道中のことだった。 つる草で隠れたミステリーな路地が視界に入った。 胸の奥から言い知れぬ好奇心が湧き出てくる。 どうせ家には戻らない、そう決めていた。 入口で邪魔するつるを掻き分け、長く成長した大草を跨ぐと、 その闇路へと足を踏み入れた。 まだ午後3時だというのに薄暗く、奥が闇で隠れている。 でも、今の俺にはこの闇が相応しかった。 地面に苔と雑草が密集していて歩きにくく、 周りを高い塀が囲っており、圧迫感がある。     
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