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一人の少年が、商店街を歩いていた。
夕方の人通りの多い時間帯。今日はいつもに増して人が多い。
提灯はぼんやりと温かく周りを照らし、若い女性が纏っている浴衣には色鮮やかな花が咲いている。
ああ、そうか。今日はお祭りなんだっけ。
「なにもこんな日におつかいなんて頼まなくても」
少年は独り言を呟きながら、人の波をかき分け、目的の店へ向かう。
「坊主、お使いか。偉いなー!」
力加減の下手な店の親父に頭を乱暴に撫でられる。適当に流して払い除けると、頼まれたものを受け取った。
周囲の喧騒も、店の親父のからかいも、全てが全て、煩わしい。
「きゃっ!」
来た道を引き返そうと振り返ると、小さな悲鳴とともに何かにぶつかる衝撃を覚えた。
見ると、自分と同い年くらいの少女が尻餅をついている。
面倒に思いながらも、少女に手を貸して立ち上がらせると、少年は家に帰ろうと再び歩き出した。
が、後ろから腕を掴まれ引き留められた。掴んだのはさっきの少女だ。見れば悲しげに表情を曇らせている。
自分が泣かせてしまったのかと内心焦りながら、今にも泣きそうな少女に事情を聞くと、親とはぐれてしまったという。
さらには、一緒に探してくれと。
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