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射的にくじ引き、たこ焼きにわたあめ。楽しいもの、美味しいものに囲まれて、二人の夜はとっぷりと更けていく。
次第に花火が打ち上がり始めると、二人は本来の目的を忘れ、夜空に咲いては消えていく、大きく煌びやかな花に目を奪われた。
最後の花火が打ちあがる。祭りもこれでおしまいだ。
気付けばすぐ横にいたはずの少女が、数歩離れた場所にいた。
「ばいばい!」
少女は少年に笑顔で手を振ると、人ごみの中へ消えていった。
あっさり姿を消した少女に呆気にとられながら、少年は一人取り残された。
もしかして、親が見つかったのだろうか。それならいい。もうあの子はきっと泣かなくて済むのだから。
寂しさに一瞬胸がちくりと痛むけれど、本来の目的を思い出した少年は、言い聞かせるように一人ごちた。
(楽しかったなぁ。……そういえば、名前、聞いてなかった)
名も知らぬ少女と、過ごした時間。
それは、確かに短い時間だったけれど、少年にとってはとても密度の濃い、幸せな時間だった。
家に帰ると、少年は母に怒られた。お使いの途中だったのだ。当然であろう。
けれど、怒られているというのに少年がどこかすっきりしたような顔をしていることに、母は気が付いた。
「お風呂、入っておいで」
告げる母の口元は、柔らかく弧を描く。
久しぶりに見た少年の楽しそうな様子に、母も喜びを隠せない。
部屋に戻った少年は、扉の傍に一枚の紙が落ちていることに気が付いた。
それは、少し前に笹の代わりにと、窓に吊るしていた短冊。
そういえば、何を願ったんだっけ。
拾い上げて目にしたその内容は、
「一緒にお祭りに行ってくれる友達が欲しい」
何かの気配を感じて窓の方を見てみれば、
そこには、月の光に照らされて光る、青いヨーヨーが転がっていた。
終
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