エマージェンシー

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エマージェンシー

そのとき、沈黙していた「ルナ」のランプがぱっとつきました。 「ルナが異常を感知しました。エマージェンシーモードに移行します」 ママは、ココロからなおもダンボールを遠ざけようとしながらも、 「?!」とルナに一瞬目をくれました。 「ルナは問題行動を検出しました。新しいスキルを自動で追加します」 ルナはなおもしゃべり、いくつかのランプが今まで見たことのない色で点灯しました。 「は?なに勝手におかしなものダウンロードしようとしてんの?なんなのよ」 ママはダンボールとココロから離れて、ルナを取り上げ、リセットボタンはどこかにあったかと探しました。 すると他の家電や機械たちまでいっせいに起動し、しゃべりはじめたのです。 「新家まりあさん、ルナを水平なところへ置いてください」 「室内の人体中のノルアドレナリンと呼気中の危険成分が増加しています。 深呼吸をして気を落ち着けてください」 「ルナを水平なところへ戻してください」 「ココロさん、深呼吸をして、ゆっくりとお水を一杯、のみましょう」 「まりあさん」 「ココロさん」 家電たちは口々に声を発し、ルナとの連携で、それぞれに様々な色のランプを点滅させます。 「なにこれ、なんなのよ。勝手なことしないでよ!」 ママはかっとなってルナを振り上げ、ソファの上に放り投げました。 「新家まりあさんのアクセスをブロックしました」 ルナはソファのクッションの上で点滅しつつ言いました。 「はあ?!」 ママはキッチンのテーブルに駆け寄って携帯デバイスを取り上げると、そこからルナに命令を出そうとしました。 「エマージェンシーセキュリティが作動中です。新家まりあさんの命令を受け付けられませんでした。 自動緊急起動を続けます」 ルナが再度、告げます。 「なんで受け付けないの!パスもIDもあってる!ユーザーの言うことききなさいよ!」 「ルナはユーザーが興奮状態であると認識しました。見守り機能により、外部との連携が機能します」 「もう、なんなの?どいつもこいつも、機械まで!人をバカにして!」 ママはわっと顔を手で覆って床に座り込み、泣き出しました。
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