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カーテンの隙間からマンションの室内に明るい光が差し込んでいます。
壁のアンティークを模した時計が午前7時を示すと、朝日よりもひときわまばゆい光が、「ルナ」のランプから、ココロのベッドまでさしこみました。
「ルナ」は家庭マルチAIスピーカーで、「見守り機能特化型」のヴァージョンの名称です。
ココロが抱いて寝ている「トト」が短い両手を前に突き出し、ココロの頬にぽてぽて、と触れました。
「七時だよ!ココロ、起きて遊ぼうよ!」
「…いいよ」
ココロは小さな目を開けて、一度だけ眠たそうにまぶたを閉じましたが、すぐにまた開いて、トトをなでながらくすくすと笑いました。
おしゃべりぬいぐるみロボットの「トト」は、チワワほどの大きさのしろくまの形です。
ココロがよっこらしょと身を起こすと、
「シルフィ」が
「起きれたの?えらーい!」
と丸みのある声で言いました。
シルフィは、おしゃべり機能つき学習AIエアコンです。
「えっへん」とココロ。
「ココロ、おはよう!天気予報によると、今日は、暑くなるよ!室内の温度は、27度に設定するね」
「はーい」
ココロは、ベッドから飛び降りました。
ココロは、この家の女の子です。誰かにココロのことを聞かれたら、「ココロは、ひとりっ子。もうすぐ、小学生!」と言います。
元気よくはきはき答えられると、ママが喜びます。
「おはよう、ココロさん。今日は、たんすの3番目にあるお洋服から、好きなのを着てみましょう」
「うん」
ルナがココロに言いました。
「はーい」
ココロは、たんすから洋服をひっぱりだして床に広げ、あっちを持ち上げたり、こっちを持ち上げたりしはじめました。
「ルナ、今日、お家の中にいるのは?」
ココロは、自分ひとりしかいないとき、ときどきそう聞くようにとパパから言われたことを問いかけました。
「現在、家の中にいる人は、新家(にいけ)ココロさん。以上です。
顔認証システムとサーモカメラの記録では、登録していない人間は、今この家の中にはいません。安心してください」
「おーけー」
ココロは、ちょっとがっかりします。
寝ている間にパパかママが帰ってきたかもしれないから、毎日、起きたときはそう聞いてみます。
あと、昼と、夜にも。
でも、もう、すごく期待してきいたわけじゃないんです。
「今日も、ママなし」
でも、ひとりだけど、ひとりぼっちじゃありません。
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