ココロと本当のパパとママ

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ココロと本当のパパとママ

今日のキッズチャンネルでは、ダンスの後に新しいアニメ映画のレポがはじまりました。 着ぐるみキャラクターが映画を観にきていたお友達にインタビューをしています。 その子は、幼稚園から大学まである私立の、有名ななんとかという小学校の制服を着ていました。 ココロは、はっきりは覚えていませんが、あれ?どこかできいたことがある言葉の響きだな、と思いました。 そういえばママが何回もパパに向かって言っていた言葉の響きがこの学校の名前と似ています。 いえ、きっとこれです。 「ルナ、この学校、ママがココロが行く学校って言っていたところ?」 「そうです。幼小中高一貫校といいます」 ココロは頬杖をつき、しばらく、画面をだまって眺めました。 「ルナ、ママはココロがここに行けなかったから、どこかへ行っちゃったの?」 「難しい質問です。少し 待ってください」 ルナは答えました。 ココロのママはココロを保育園に、それも「しっかりしてて、先行き安心」と いうところに入れたかったのですが、ただでさえ、ココロの住んでいるところは、「げきせん区」というやつらしく、ココロは、ずっと保育園に入れないまま、もうすぐ公立の小学校という年になってしまいました。 その代わり、パパはママとココロが快適になるように、最新のAI家電をひとそろい買ってくれました。 すべてがネットワークでつながれ、インターネットに接続していて、外からも操作ができ、データベースで情報を共有し、蓄積学習し、自動でブラッシュアップし、人と会話できる、AI家電です。 それらすべては「ルナ」で統括されています。 家電が入っていた箱には、 「人と人と、いのちをつなくグレーシーCorporationです。 この電子のサポートたちは人の生活をぐんと楽に、安全に、快適にしてくれます」 という言葉とロゴが書かれていました。 しかし、ココロがおぼえている限り、その家電たちをパパが使った記憶は あまり、ありません。 去年の誕生日には、パパが一緒にいたと思うのですが、それからパパにお家で会うことはほとんどなくなってしまいました。
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