ココロと本当のパパとママ

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「パパいないね」 ココロが、夏になる前の雨が多くなり始めた時に、なんとなく、キッチンに立つママに 話しかけたとき、ママは、ココロのほうを見ないで、ただ剥いている野菜をおかしなくらい睨みつけ、低い声を出しました。 「あなたがだめだったから」 ココロのまわりから音が消えたようにしんとしました。 ココロは、ママが言ったことを一音ずつ繰り返して、忙しく意味を考えました。 でも、ママはすぐにココロのほうを向いて、 「なんでもない、間違えた。パパは忙しいの。それにちょっとコドモなとこあるから まわりの人が大変なのよねえ」 とうっすら、無理やりのように笑いました。 パパはパパなのに、コドモじゃないのに。わかんない。 とココロは思いました。 それから少しして、テレビと家電が「猛暑!」と叫び始めた日、ママの姿もお家の中から消えました。 ココロは、家の中をしばらく探してみましたが、ママの好きな新しいお洋服と靴、大きめの、いつも繰り返し使っているトランクが、いつもある場所にないことだけがわかりました。
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