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暗く深い海の底。
神秘が眠るその場所で
1匹の醜い魚は産まれました。
その姿は、それはそれはおぞましいもので
縄張りには、寄り付く魚さえ現れません。
鮮血のような真紅の体。
胴には、大小さまざまな毒々しい斑点が彩られ
瞳は濁って禍々しい光を灯していました。
岩陰にひっそりと暮らす魚とその祖父。
やがて彼は、まわりの違和感に気づき始め、
ある日祖父に問いかけます。
「ねぇ、おじいちゃん。」
「なんだい?」
「どうしてみんな、僕を怖がるのだろう。」
孫魚は、濁った瞳をぎょろりと光らせ
不思議そうに言いました。
「なぁに、怖がってなどいないさ。」
「僕が話しかけようとすると、皆逃げていくよ。」
「異彩を放つ者は、いつの世も馴染まれにくいものさ。」
「おじいちゃんもそうだったの?」
「そうだとも。」
醜い魚の祖父は、懐かしむように言います。
「ものめずらしいのさ。わしらの種がな。」
「・・・めずらしい?」
「お前もじきにわかるさ。わしらは気高い魚だ。」
胸を張って良い、と祖父は誇らしげに言いました。
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