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肉のない両の足は何処に向かうか、何処に行くべきかを教えられたようにコンクリートを蹴っていく。
幽鬼のように刻を漂い辿り着いたのは海と陸の境界線。
裸足の指の隙間に入り込む砂は日中の熱を吐き出し終わったようで心地好かった。
一定のリズムで届く波音が耳を支配する。
真夜中の海は、闇を蓄え膨張したように冥い。
ぱしゃり。
ばしゃり。
砂は一粒ずつ私から逃げていき、代わりに生温い水が足に絡む。
「あなた」
ざぶり。
「向こうに行かれるの?」
ばしゃ。
振り返った先に、人の形はなかった。
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