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無造作にモノが置かれた部屋に男が一人だけ座っていた。ネロの仲間である、パラードと同じぐらいかもう少し老けているぐらいの男で、何かをする訳でもなく。ただ静かにモニターの中で、ヒットマンパレードを観戦していた。
「ディークを伝説的なスナイパーだというのならば、彼は最強の殺し屋、ロンバンズ・グローゲン。彼を“殺す権利”を得ることが目的なのだろう」
ロンバンズ。このヒットマンパレードの企画者でもあり、マドレッドTVの会社社長。彼を“殺す権利”が優勝者に与えられる。それを試行するか否かは本人に委ねられるが、殺し屋の誰もがその権利を欲していた。ロンバンズは生きた伝説として、今でも世界に語り継がれている。現在は現役の殺し屋は引退し、マドレッドTVなるテレビ局の社長を務めている。
「そうか」
しかし、ネロはロンバンズに対し何の関心も寄せていなかった。元々、殺し屋でもない元看守のネロに権利など無縁の話である。そもそも、自分を殺す権利を優勝賞品にするなど正気の沙汰ではない。そのような人物が主催するヒットマンパレードもロクなものではないと思っていたが、ここまで酷いとは思いもしなかった。
「どうした?ロンバンズ社長を殺せるのだぞ。興味はないのか?」
「興味はない。俺は元々、ここの連中とやり合う為にきたのではない」
「私達と殺し合う為に来たのではない?」
マシューは少し意外そうな顔をした。てっきり、ネロは殺しをしに来たばかりだと思っていただけに。誰よりも状況を判断して動けるが故に、強敵と思っていたが、その答えはあまりに意外だった。
「では、何をしに・・・」
マシューが尋ねようとした時、キッとネロは厳しい顔を上げ司会者の雁屋を見た。
「さぁ。皆様、そして、よいよ、本日のメェェェェンディッシュゥゥゥゥ!過去三回の戦いにおいて全く敵を寄せ付けず、単身で圧倒的力で全員を皆殺しするという前代未聞の偉業を成し遂げた殺し屋中の殺し屋を紹介します!」
大興奮の観客達の前で雁屋がスポットライトを直に操作できるリモコンを使い、スポットライトの光りを、観客席の一点に合わせた。
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