2.ネロとキャロライナ

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「“キャロライナ”・・・」  ネロはスポットライトを浴びる中、一人で観客席に腰掛けている男を見て彼の名を口にする。男の周囲に元々、観客はいた。満員御礼で立ち見も埋まっているほどの盛況ぶりだ。だが、男を中心に数十メートルに渡って生きている者は誰もいなかった。  全員、切り殺されていた。 「さっそく、その腕を振るっていたようだ!キャロライナ・パンパスゥゥゥゥゥ!」 「キャロライナァァァァァ!」  司会者の雁屋がキャロライナを口にすると、同時にネロは声を張り上げた。コロシアムに響くほど、普段の冷静なネロでは考えられないほど怒りが籠もった声であった。  ネロの怒声にコロシアムが一瞬、静かになった。殺し屋だけでなく、観客も。 「ん?」  怒声に気付いたのかキャロライナは自ら切り刻んだ死体を踏みつけながら立ち上がり、コロシアムにいるネロに目をやる。  怒りのあまり表情が大きく歪んでいる、ネロがそこにいた。 「・・・!」  ネロの顔を見て、彼----元〈スロク〉、キャロライナ・パンパス【殺意】は驚いたように目を見開く。 「お前、もしかして、ハバ・ネロか。久々だな。何年ぶりになる?」  なにが嬉しいのかキャロライナはニタニタと笑みを浮かべながら、両手を広げる。まるで、ネロを歓迎するかのように。 「こっちは、考えたくもなかった。だが、過去のヒットマンパレードで優勝した者の名前と写真を見たとき、まさかと思った」  ヒットマンパレードにルールなどない。ネロはロープとナイフを取り出すと、観客席にナイフを投げ突き刺し、一本の道を作る。迷い無くロープに乗ると駆け出す。 「考えたくもなかった。異世界だから俺みたいに似た人間がいても、不思議ではない」  以前にもあったキャロンの一番の友人がメガネこそかけていたがネロと姿がよく似ていた。だから、他の世界に似た人間がいることもおかしくなかった。  けれど、観客席を陣取る男は違う。彼はネロのことを知っていた。ネロのフルネームを知っていた。 「だが・・・!こうして、俺の名前を知っているお前がここにいる!」  そして、久々と言った。 「俺のことを知る。お前が、ここにいる!」
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