2.ネロとキャロライナ

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 ネロはロープと上がりきると同時に、さらにナイフとロープを取り出す。一切合切、無駄な動きなどなく、キャロライナを殺すつもりだった。  一方、ネロのことを知っているキャロライナは対照的に冷静なままだ。それぞれの柄が鎖(チェーン)で繋がれた短剣と普通の剣の武器を取り出すと、短剣と剣と交差させ、ネロを煽るかのように〈スロク〉の証でもある、逆さまの十字架を作ってみせる。 「俺も覚えているぞ。痛かったな。“あの時”は」  キャロライナはそう言って、切りつけてくるネロのナイフを二本の短剣と剣で受け止める。制帽の下から見える顔には痛々しく大きな火傷の痕が残っていた。キャロライナは短剣と剣でネロの攻撃を捌きながら言う。 「グラスの力を持ってしても、以前につけられた傷は治せないらしい。まあ、それも仕方ないことか」  キャロライナはネロの隙をつき、足を踏み込むとネロの腹部に蹴りを入れる。とっさに、ナイフで防ごうとするも間に合わず、蹴りを真正面から受けたネロは蹴り飛ばされ、コロシアムのスタジオに押し戻された。  キャロライナは黒いズボンのポケットからタブレットケースを取り出す。それは某会社で作られたものを彼はどこで、入手したのか知らない。ケースの中身は数あるデスソースの中でも最上位ともいえる“16 MILLION RESERVE or 6 AM RESERVE”。そのあまりの、辛さ故に自社でも『決して食するものではありません!』と警告しているほどに。それに、ソースと銘打っているが、唐辛子等の辛み成分であるカプサイシンのみを結晶化させたものである。それを潰し顆粒状(タブレット)に固めたもの素手に取ると、キャロナイナは口にする。  本来なら、素手で掴むことすら危険な代物だというのに彼は普通にお菓子でも食べるかのように食した。 「ネロ。ただの看守ごときが、刑務官の俺に勝てるとでも本気で思っているのか?」  顆粒を口にしたキャロライナは全身から熱を発しながら言う。一撃でコロシアムまで蹴り飛ばされたネロは身体を起こすと同時に、ベルトのソケットからタバスコの小瓶を取り出すと直接、口にする。
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