2.ネロとキャロライナ

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「うるさい。前に、処刑された身でありながら。正直、悪い夢だと思った。単なる悪い夢だと、他人の空似だと・・・!お前、〈スロク〉に加入したんだろう!」  ネロは叫ぶ。もっとも、最悪のシナリオを考えを口にして。 「そうだな。グラスに俺の中にある【殺意】が認められて〈スロク〉のメンバーに選ばれた。もっとも、今はその〈スロク〉も抜けて好き勝手に【殺し】をやらせてもらっているがな」  キャロライナは観客席から立ち上がると、チェーン付きの短剣と剣を空に掲げて言う。 「ネロ。ここは、素晴らしい世界だ!あんな狭い世界とは違い!ここで、示されるものは強さだけ!俺は、この世界が気に入っているんだ。慌てて、今すぐ【殺し】にかかることもないだろう。ゆっくり、ショーを楽しんだらどうだ?」  キャロライナは笑っている。ゾッとするほどの笑みを浮かべて。 「殺す?違う!」  ネロは声を張る。 「これは、あの時の刑の執行の続きだ!キャロライナ・リーパー!お前のような殺人狂を放置しておけるか!」 「相も変わらず、真面目な性格をしていな。異世界に来ても、故郷の任務を真っ当しようというのか。もう少し、柔軟に生きてみろ・・・。ヒットマンパレード、殺し屋達による殺し屋の為の祭典なんて、俺達の世界ではみられないことだろう。それに、お前が俺を処刑したいと思っていても、簡単にはできないけれどな」 「なんだと・・・」 「決まっているだろう。過去三回の優勝者である、俺からこの・・・」  キャロライナは制服の胸ポケットからカードを取り出して見せる。スポットライトに照らされたカードは反射し銀色の表面が白く反射した。一瞬の眩しさに目を細めるネロであったが、それは彼の知るものでもなければ、欲するものではない。  しかし、キャロライナがネロの知らない銀色のカードを提示した瞬間、明らかに場の空気が変わった。  ネロはキャロライナだけに集中していたかったが、彼の背後から狙撃銃で狙いを定めるデュークの姿が。 「相手をしている暇はないというのに!」  キャロライナを真っ先に処刑したいネロであったが、銃口を向けられた以上、その場に留まる訳にはいかなかった。ナイフ付きロープを振り回し勢いを付けると、廃墟と同じように建てられた石柱の継ぎ目に狙いを定め投げつけた。
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