2.ネロとキャロライナ

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「どうやら、腕は鈍っていないようだな。いや、前にも増して精密度が上がっているか」  先程からネロもそうであるが、キャロライナ自身も彼のことを知っているのか。関心した様子でいた。 「これはいったい、どういうことだァァァァ!初参戦であるネロとキャロライナは知り合いであるようです。これは、どのような展開を向かえるのか!想像がつかなくなってきましたァァァァ!」  二人の事情を知らない雁屋は一人、番組を盛り上げようとマイクをとっている。  開始早々の砲撃だけで、相当な死者数が出ているが今となっては、小さなこと。観客も視聴者も、誰もが殺し屋達による殺し合いに熱狂していた。 「やれー!」「殺せぇ!」「八つ裂きにしろ!」「撃ち殺せ!」「ぶっ殺せェェェ!」  四方から観客達による声が響き、それもまたヒットマンパレードを盛り上げるのに一役買っていた。 「さすがは、デュークだな。もうネロに狙いを定めたか」  マシューは動きが速いデュークを賞賛しつつも、彼は彼で戦う準備を整えていた。 「さてと、こちらはこちらで、殺し合いが始まっているようだな」  視線を移せば、もうすでに戦いは始まっていた。生き残った者達同士による戦い。皆、各々の武器、道具、技術を用いて他の殺し屋を殺していく。うかうかしていたら、自分が殺されてしまうかもしれない。 「おや?どうやら、さっそく新人さんを相手にしますか」  マシューはメスを手にすると、自分に向かってくるムレーニに対して突き出す。傘型の銃器であるが、頑丈さも売り物らしく折り畳んでいる状態ならば鈍器としても扱えるらしい。マシューのメスをムレーニは傘ではじき飛ばすと、無言のまま、銃口でもある傘の石突きを突き出した。 ムレーニに銃口を間近に押しつけられたマシュー。普通なら、驚きよろめくものであるが、彼は躊躇することなく押しつけられた銃口に自ら向かった。彼の予想外の行動にムレーニは驚き。引鉄を引くのが遅れた。  マシューは手持ちの鞄を捨て左手で銃を押し上げると、メスをムレーニの眼前まで突き出す。あと1、2センチのところまでメスを近づけると、マシューは細く微笑む。まるで、この状況を楽しんでいるかのように。
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