2.ネロとキャロライナ

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 特に怪しいのは三回のヒットマンパレードに置いて、連続優勝を皆殺しという形で果たしたキャロライナだ。全く知らぬ殺し屋。かつて、殺し屋だったロンバンズも知らない殺し屋である。経歴も一応、書かれているが、どれもデタラメ。元々は、どこかの国で刑務官を務めていたらしいが、その国名は過去の歴史を遡っても存在しない。真っ赤な嘘であることは明白であるが、三度目に優勝した際に彼はテレビのカメラマンを殺して、カメラを奪うと、カメラに向かってこう言った。 {俺は、【虚飾】とは違う。嘘はつかない方だ。俺は元刑務官で、国で処刑された身。ここにいるのも、ちょっとした暇潰しだ}と。  あれも嘘か冗談だというのか。 (それにしては、真に迫るものがある)  殺し屋という仕事を長く続けていると、自然と真意というのを感じられるようになる。本当に“命乞い”をしているのか。それとも、“反撃”の隙を伺っているのかが。  どこの誰なのか、分からない。殺し屋。 (もしかしたら、こいつなら・・・)  ロンバンズはキャロライナの顔写真を食い入るように見つめた。三回も優勝を果たしている、注目せずにはいられない。だが、しばらく、見つめていると、すぐに首を横に振って、 「違う。彼じゃない」  小さく呟いた。 「彼じゃない。彼じゃないんだ」  ブツブツと独り言を繰り返しながら、他の出場者にも目をやる。  誰に対しても同じ言葉を。 「違う。違う・・・」  誰も彼も、ロンバンズが望む者ではなかった。 「・・・・」  このまま、最後まで名簿に目を通そうとした。しかし、ロンバンズは手の動きを止めた。ムレーニの項目で。 「ムレーニ」  ロンバンズは顔写真と一緒に掲載されている名前を口にする。懐かしい響きに、口元が緩む。 「そうか・・・。そうか・・・」  ロンバンズは何かを察したのか頷き、笑みを浮かべた。何度も、心の中で殺し屋、ムレーニの名前を繰り返す。 「社長。ご報告があります」  喜ぶロンバンズに割り込むように、タブレット端末の画面が切り替え顔を出したのはベラン。彼女はいつものように事務的な口調で報告を入れる。 「たった今、殺人金庫(マーダーボックス)に新たな挑戦者がやって来ました」 「挑戦者か。どんな奴らだ?」
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