1.ヒットマンパレード開幕

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「そんな、女みてェな華奢な身体で生き残れるのか?始まる前に殺してやろうか」  なんて言い、ネロを牽制する。大柄の男が言うことも一理ある。ここに集められた連中のほとんどは、筋肉質でがたいの良さそうな人ばかり。鎧兜に身を包む騎士のような者もいれば、近代的な防弾防刃チョッキを着る軍人のような者。さらには、どう使うのか火炎放射器のようなものや、農薬を撒くのに使う散布機を背負っているのまでいた。もっとも、散布機の中身は農薬ではなく濃硫酸が入っているが。こんなところで、使えば一溜まりもないが、持ち主であるガスマスクをしている男も、ただではすまない。濃硫酸が危険だからではない。もし、この場で使おうとすれば、この場に集まっている他の“同業者”に殺されてしまうからだ。背負った分の濃硫酸で殺せる人間など、数が限られている。むしろ、反撃に遭い殺されることを考えれば、この場でそれを使おうとするのは愚か者の発想だった。 「やめときな。お前ごときに、殺せる青年ではない」 「なんだ?テメェは・・・!オレを誰だと思っている」  大柄な男を制止したのは、これまた場違いな男。青縁眼鏡に学生が着るような灰色のイートンジャケットを羽織っていた。名指しされた大柄の男は機嫌が悪そうに眼鏡の男を睨み付ける。睨みを効かされた眼鏡の男は大柄の男の威嚇に全く動じることなく鞄からタブレット端末を取り出すと、ページを開き、 「アイザック・クローニネ。腕力と握力で多くの相手を殺してきた殺し屋。殺した人数は百人を越える」 「ほう。知ってるじゃねェか。オレは、今日の放送は優勝する気で来ているんだ。邪魔だてするなら、放送前にお前を殺してやるぜ。蘇生狂のマシュー」 「ほう。私の名前を知っているとは、見かけとは違い単なるでくの坊という訳ではなさそうだな」 「言ってくれるじゃねェか。標的は変えた、まずは放送開始と共にお前の首をへし折ってやる」 「その前に、私はお前をペースト状にすり潰してやるけどな」  まだ放送前だというのに、中は異様な熱気に包まれていた。それだけにネロの冷淡さがより目立って感じる。
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