1.ヒットマンパレード開幕

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 相手は目をやれ動けないというのにも関わらず、雁屋はマイクを相手の口に押し込む。痛みと口に入れられたマイクのせいでまとも喋ることもできない相手はモゴモゴと口を動かし何かを言うおうとしているが聞こえるのは乱れた呼吸の音を含めた雑音、観客席からの笑い声しかなかった。 「目から涙と血を流している男の喘ぎ声ェェェェ!」  雁屋は片手で襲ってきた相手を持ち上げると、満足に喋ることもできない状態にある彼の喉を角手で突き刺す。喉に深々と棘が突き刺さると、雁屋は引き抜こうともせず、反対に棘を刃物のように横に動かす。先端が尖っているとはいえ、これは刃物ではない。無理に横に動かそうとすればどうなるか想像できるだろう。  喉が引き裂かれ流血を雁屋は真っ向から浴びる。 「開始早々、血まみれになってしまいましたがァァァァァこれでもヒットマンパレードのDai☆GO☆MIというもの!」  袖で顔や髪に付いてしまった血飛沫を拭うと、雁屋は何事もなかったかのように司会を続ける。それを、観客やテレビを通してみる人々は熱狂しながら見ていた。  雁屋は人殺しを続けつつながらも、マイクを手放すことはなかった。 「さて!皆様!本日もご覧の通りィィィ実に多くの血肉に沸き踊る殺し屋が文揃いしました。数が多くふるいにかけるのも、面倒でしたので殺し屋に待機していただいた控え室を戦車で爆撃させていただきましたァァァァァ!」  雁屋が指を弾くとビデオカメラが切り替わり、戦車の砲身から放たれた砲弾により破壊された門が映し出されていた。普通、戦車の砲弾というものは装甲車を破壊するのを主な目的としている。しかし、この世界の戦車の砲弾は対象はなにも装甲車に限ってはいなかった。対象物を破壊すると同時に、中にいる相手も確実に殺すよう造られている。 「危ない。危ないなァ。本当に・・・」  思わぬ開幕にマシューはホッと胸を撫で下ろす。ネロの動きをみて、とっさに壁になってもらえるよう大柄のアイザックを麻痺させ立たせたておいた。おかげで、砲弾に殺傷力を高めるよう込められていた鉄片や門の残骸を浴びずに済んだ。もっとも、マシューの壁となったアイザックは胸より上が消えており、背中には無数の破片が痛々しく突き刺さっていた。
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