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「・・・グフ」
ヒットマンパレードは実にシンプルなルールで行われる。
最後まで生き残った人物が優勝者。もちろん、途中参加もあり。たった、これだけだ。それ以外、何もルールは存在しない。何をしようと、どんな手段を使おうと自由なのだ。
そもそも、“法のない世界”で、ルールという言葉すら曖昧だった。あくまで暗黙の了解でしかない。
“殺し屋同士の祭典”という名の殺し合い。出だしから、ネロにとって目を覆いたくなるようなことばかり起きている。
戦車の砲撃を避け生き延びられたというのに、その直後に殺される者もいるのだから。
「・・・・」
女だ。アイザックがネロのことを女のようだと言っていたが、普通に女も参加していた。
黒いマントを羽織る女は傘を携えていた。赤い傘だ。最初、ネロはずいぶんと派手な傘を持つ女だなと思っていたが、次に目撃したものをみて、傘が赤い理由を知る。
女は床に穴を造り隠れ潜むことで戦車からの砲撃を回避したガスマスクの男を真上から狙撃する。女の傘は普通の傘とは違い、軸となる部分が銃に改造されていた。傘を開けば、布地が彼女の姿を隠すだけでなく防弾の役割を果たしてくれる仕掛けである。
脳天を撃ち抜かれたガスマスクの男は穴の中で息絶える。血が飛び女の持つ傘に飛沫がかかる。そうだ。あの傘が赤いのは彼女が名の通った殺し屋の証でもある。幾千の血を浴び続けた傘は、その布地を真っ赤に染めてしまっていた。
「あの女が気になるのか?」
マシューはネロの心の内を見透かしたように尋ねる。これから、殺し合いになるかもしれないというのに、そんなことを少しも感じさせず親しげに。これも、殺し屋としての才能なのだろうか。
「あの女は、ここ数年、売り出し中の殺し屋、ムレーニ。恐らく、ヒットマンパレードに出た理由は、スナイパーのディークと同じ」
そもそも、このヒットマンパレード。殺し屋達を集めて、殺し合いをさせるには理由があった。それは、単に殺し屋が己の実力を証明したり、殺し屋の数を減らすことが目的ではない。
チラリと、マシューはコロシアムに掲げられたモニターに目をやる。コロシアムの様子を中継しているモニターに混じって、おかしな映像が一つあった。
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