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「陽多?どうかした?」 「ふぇ?!あぁごめん!ぼーっとしてた」 「やっぱ曇ってるとはいえ暑かったかな?熱中症とかになってないよな?頭痛くない?」 「過保護だなぁもう。大丈夫だよ」 柊凛が転校してきてから一か月ほど経った昼休みのこと。日に日に暑さが増し、湿度も上がって蒸し暑い季節がやって来ていた。 制服もブレザーを脱いで夏服に移行する季節だ。すっかり仲良くなった俺たちは屋上の日陰で一緒に昼ご飯を食べていた。 一か月経ったとはいえ柊凛の人気は衰えることを知らず、相変わらず人が集まって教室にいては静かにご飯を食べることすらままならない。 見かねた俺は柊凛を連れ出し、出来るだけ静かに休憩できる所を探してここに落ち着いた。今では、昼休みはここで二人で過ごすことがほとんどだ。 転校当初は人混みが苦手で彼の周囲を避けていた俺だったが、後から聞くとどうやら柊凛も人が多く賑やかなのは苦手だったらしい。だから、あんな険しい表情をしていたんだろうか。 「それならちゃんと皆に言えば良かったんじゃないの?」と彼に言うと、「皆悪気があるわけじゃないし、折角僕のところまで来てくれてるのにどっか行ってくれなんて言うのも申し訳ないしね」と何とも模範的な解答が返ってきたのは記憶に新しい。 ああ、こりゃモテるわ。俺は確信した。だから時間が経ってもこいつの周りには人が絶えないんだなぁ。俺なんかが独り占めしちゃってていいのだろうか。何故だかそんな罪悪感が湧き上がる。
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