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明るい灰色の雲が太陽を隠してはぽつりぽつりと小さな雨を降らし、また少し晴れては曇り…そんなよく分からない天気が続く、ある日の帰り道。
こういう時って傘を差すべきかどうか本当に微妙なところで迷っちゃうよなぁ。
鞄の中の折り畳み傘を広げようか迷っていると、隣を歩く柊凛がぽつりと俺に聞いた。
「あのさ、陽多の家、行ってもいいかな」
「へ、今日?」
「迷惑だったらいいんだけど」
「いや全然!いいけど、何もないよ?」
そういえば家に友達を連れてったことってあんまり無かったかもしれない。こういう時どういう風に振る舞うのが正解なのか分からなくて何だか少し緊張する。
「行ってもいいの?」
「大したもんはないけど、それでもいいなら」
「ありがと。この目でちゃんと見てみたかったんだ。きみが育ったところを」
「…おう?」
大袈裟な奴だなぁ。柊凛の発言の意図はよく分からなかったが、喜んでくれてるならまあいいか。
そうしていつもなら別れる曲がり角を今日は一緒に曲がり、俺の家へ二人で向かった。
「へぇ、珍しいな。カイが懐いてる」
チリンチリンと軽やかな音を鳴らして俺たちを出迎える灰色の弟。
普段は来客があると俺の後ろか部屋の何処かに隠れてしまうカイが、俺にするのと同じように柊凛に擦り寄っていた。
尻尾を立てて嬉しそうに擦り寄る様はまるでずっと一緒に暮らしてきた家族みたいだ。初対面のはずなのに、カイがこんなに懐くのは珍しい。
「そいつ、カイっていうんだけどさ。人見知りみたいで俺とばあちゃん以外には寄りつかないんだよ」
「…そうなんだ。僕も、昔っから動物には懐かれやすいんだよね」
「へえ。何となく分かる気がするなぁ」
雰囲気も柔らかいし、人にもあんだけ好かれてるんだからこいつが動物に好かれやすいってのも納得できるな。柊凛が動物に囲まれている姿を想像すればするほど、本当にリアル白雪姫な気がして何だか頬が緩む。まるでメルヘンの世界だな。
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