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何故だろう。柊凛といると俺、何か変だ。 誰にも話したことのない記憶を、俺でさえ忘れかけている曖昧な記憶を何故だかこいつには話したくなってしまった。 柊凛といると、記憶の奥にある濃い霧が所々晴れていくような、たまにそんな感覚に陥ってしまう。それでも何かを思い出せたと思っても、何を思い出せたのかさえすぐに忘れてしまうのだが。 仏壇の前に正座する柊凛の隣に俺も腰を下ろして、額縁の中の笑顔にいつものように手を合わせる。 「ばあちゃんただいま。今日は友達が来てくれたよ」 俺がそう言うと、柊凛も静かに手を合わせてくれた。ただ静かに長い睫毛を伏せ、目を閉じる。挨拶するにしては少し長い沈黙。 …ばあちゃんと何話してるんだろう。 祈るようなその姿が何故だかとても神々しくて、俺は目が離せなかった。
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