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「遠いところから来たんだ、僕。だから、ちょっと訳があって一人暮らししてるだけ。陽多が気にするようなことは何もないから、そんな顔しないで」 「へ、そう…なの?」 訳ってなんだろう。よく分からないけど、親御さんの仕事の都合とかで離れて暮らしてるってことだろうか。 「今まで話さなくてゴメンね。陽多は優しいからきっと変に心配させちゃうかと思って」 「うん。いや、それはいいんだけど、話してくれてありがとう」 あれ、ってことは柊凛も帰ったら一人ってことかな。これから誰もいない真っ暗な部屋に帰って自分で明かりをつけ、誰と話すこともなく一人でご飯を食べて、そのまま一人で夜を過ごし、一人で朝を迎えるのだろうか。 一人…ひとりで。 「じゃあ、そろそろ帰るから、」 「柊凛!あの、さ!」 真っ暗な外に出て行こうとする彼の袖をくいっと引っ張り、引き留めた。振り向いた色白の顔はちょっと驚いているようで、普段は伏せられている黒い目がいつもより少しだけ大きく見開かれている。まさか引き留められるとは思っていなかったようだ。 俺も引き留めるとは自分でも思ってなかったんだけど。 「陽多?どうしたの」 「えと、お前が嫌じゃなかったらなんだけど、」 「うん」 「あの、泊まってかない?うちに」 しばしの沈黙が流れた。目の前の柊凛は一瞬瞳を見開いたかと思うと完全に無表情になり、何を考えているのか全く分からない。 俺、何か間違えたかな…。いやでも、もう外も暗いし一人で帰すのも心配だし、友達を泊まりに誘うのって別におかしいことじゃない、よな…?それなのに何でこんなにも緊張してしまうんだろう。柊凛から反応は無いし、やっぱ俺変なこと言ったんじゃ…。 あれ、ちょっと不安になってきた。自分が泊まりに行ったことは何回かあったと思うけど、家にこんな風に友達を泊まりに誘ったことなかったもんなぁ。
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