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彼の言った通り、この家は広い。田舎によくある木造二階建てだし別に金持ちだとかそういうわけじゃないけれど、俺のような高校生一人と猫一匹が暮らすにはあまりにも広かった。
彼はきっとこの家での俺の暮らしを想像して素直にそう感じたのだろう。黒い瞳は相変わらず何も言わないが、やっぱり全て見透かされているような、触れられてもいないのに優しく頭を撫でられているような気分になる。
「まぁ掃除は大変だけどね。柊凛の家は、えっと、今住んでる方の家はどんな感じ?」
「あー、まあ一人だったら全然寝れるくらいかな」
「なんだそりゃ」
俺たちが襖を挟んで談笑していると、廊下からチリンチリンという軽い音が近づいてきた。
「カイ!何だよ、お前今日はそっちで寝るの?」
「にゃあ」と可愛らしく鳴いてカイが真っ直ぐに向かったのは俺ではなく柊凛の布団の上。真ん丸く足を折り畳んで座り、完全に寝る体勢である。
いつもは俺と一緒に寝てくれるのになぁ。何だか弟を取られちゃった複雑な気分だ。
「カイ。陽多が寂しがってるよ?」
「寂しがっては!いや、寂しいっちゃ寂しいけどカイは柊凛のことが大好きみたいだからしょうがない。今日は譲ってやるよ」
「強がんなくてもいいのに。あ、僕がそっちで一緒に寝てやろうか?」
「いやいや流石に狭いから!というか、そしたらカイも引っ付いてくるじゃん」
「いいじゃん。折角なんだし皆で寝よう?」
「え、ええー?」
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