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友人に確認を取ってから改めて人混みを見てみると、女生徒や事務のおばちゃん、どこから入ったのか知れない恐らく部外者のおば様方…と、やけに女性比率が高い。なるほどメンか。 皆そのイケてるメン見たさに集まってるわけだな。もちろん中には男子生徒や俺たちのような野次馬根性で見に来ている奴らもたくさんいた。 俺と友人がこうして話している間にも、やはり少しずつ人の輪は大きくなっているのだった。 「悪い、やっぱ教室帰るわ」 先程も言ったが人混みが苦手な俺は、人が増えるにつれ、これ以上ここにいるのが何だか怠くなってきた。友人に断りを入れて教室に戻ろうとする。 「…ひなた」 「?」 名前を呼ばれた気がしてちらりと校門を振り返ると、バチッと視線がぶつかった。 人だかりの中心にいる人物が、確かに俺を捕らえている。 真っ黒な光。どくりと、心臓が跳ねた。 「なぁ、あの校門の奴ってお前の知り合い?」 俺と一緒に帰ろうとしていた友人に尋ねられる。心臓がどくんと高鳴ったのは一瞬だけで、手を当てて確認するも今やいつも通りの呑気な鼓動に戻っていた。 少し、ほっとする。 「いや、知らねーけど。何で?」 「何か一瞬こっち見てた気がしたからさ」 「…ふーん?気のせいだろ」 そうだ、気のせいだ。例え本当に彼と目が合ったのだとしてもたまたまだろうし、そもそもあんな真っ黒なやつ、俺は知らない。 俺の心臓も、いきなり目が合って吃驚しただけだろう。 「…ってかさ、さっき俺の名前呼んだ?」 「ん?さっきっていつだよ?多分呼んでねーけど」 じゃああの声も、多分気のせい…かな。 その後教室に戻ると、クラスは転校生の話題で持ちきりで中々授業が始められなかった。 興奮気味な女子たちの話を盗み聞きしていると転校生はどうやら黒髪黒目に色白の肌をしているようで、俺と目が合ったあいつと特徴が合致する。ということは、やはり彼が転校生だったのか。 正直目が合ったという事実でいっぱいいっぱいで、顔はほとんど覚えていないのだが。 心配していた午後の授業は居眠りすることはなく、しかし先程の黒い視線のことが何故か頭から離れなくてどのみち聞いてはいなかった。
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