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「転校生すっげー人気じゃね?」
「そりゃあの見た目だもんなぁ。目立つし」
翌日、噂の彼が田舎の寂れた学校にやって来た。予想通り、彼の周りは人が多くてなかなか近寄れない。
まあこれと言って近寄る用事もないし俺には関係無いんだけど。
とはいえ友人たちは皆興味津々で、休み時間に連れ立って転校生を見に行こうという話になった。
昨日は叶わなかった観察だが、今日は二日目だし集まるのも校内だけとあって昨日より人だかりは小さいはずだ。小さいとはいっても、あらゆる学年から生徒が集まってきており彼を囲む列は廊下の端まで続いていた。
そのため俺と友人らは遠巻きに、とはいえ昨日よりかは幾分近い場所で彼を観察することにした。中庭を挟んで反対側の廊下…この距離なら顔ははっきり見えそうだ。
しばらくして、ざわざわと大人数を引き連れて転校生がやって来た。噂通り目立つ風貌の彼は大勢の生徒に囲まれていても一目で見分けがついてしまう。
真っ白い肌は年頃らしい肌荒れや傷ひとつ無く、濡れ羽色の髪がさらさらと揺れる度に陽の光を反射したところが白く輝く。
…その姿はとても神秘的で、まるでおとぎ話にでも出てきそうな美しさだ。唇は真っ赤ではなく薄いピンクであることを除けば、白雪姫ってあんな感じじゃなかったかな。
横顔をまじまじと遠目に観察していると、転校生が俺たちに気づいたようだ。さらさらの髪を靡かせてくるりとこちらを振り向いた。再び視線が合わさる。
ふと俺を見た瞳は、やっぱり真夜中みたいな真っ黒い色をしていた。
「…っ!?」
途端、ふっと地面が消えたような感覚に襲われる。ふわりと身体が浮いたような、何とも不思議な感覚。
はっと慌てて足元を見るが、俺の足はしっかりと固い床を踏んでいた。
…何だったんだ、今の?
慌てて視線を正面に戻すが、転校生はもう居なかった。あれだけいた野次馬も、いつの間にか消えている。夢だったのか?
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