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「やぁっぱかっこいいわー」
「ありゃずるいよ。勝ち目ねーじゃん」
「あー、中野さん?かっこいいって騒いでたもんな昨日。どんまい」
俺と一緒に転校生を見学に来ていた友人らがざわざわと教室に向かって歩き出した。
こいつらの会話からすると、あいつが通ったことはやはり夢じゃなかったのか。確かに、こいつらも彼を見たらしい。
「なあ、」
思い切って聞いてみる。
「どしたー?ひなたぁ?あ、やっぱり知り合いだった?!」
「いやちげーけど。その、さ。目合わなかった?あいつと」
「転校生と?いや、確かに一瞬こっち見た気はしたけど、本当に一瞬だったからなぁ」
「何々ー?陽多知り合いなの?あの美人さんと??」
「そういや昨日も陽多見てなかったか?あいつ。なぁ、本当に知らないの?」
「…知らないよ。というか、会ったことあるなら忘れないだろあんな奴」
「だぁよなぁ。いくらお前でも忘れねぇよなぁ」
くっ、馬鹿にされている…!確かに人の顔とか覚えるの得意じゃねぇけど。
昨日も思ったが、あんな奴は知らないはずだ。あんな目立つ奴、関わったことがあるなら例え俺だってそう簡単には忘れないだろう。
そうは思っても、何か引っかかる。あの視線、初めてじゃない、気がする。
どこかで見たっけ…?
とはいえいくら記憶の引き出しを探してみても、やはり思い当たることは無い。
だけど正体の分からない、無視出来ない程の引力が確実に俺を捕らえていた。
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