夏の残り

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「ねぇ」  ふらりと起き上がる。足許がおぼつかない。 「寛太が悪いのよ。突拍子もないこと言いだすんだから」  泳ぐようにリビングに出ると、額に手をかざし西陽を避けながらソファにへたりこんだ。掃除機のモーター音は胸の中に掬ったわだかまりを掻き回して、思わず叫び出したくなる衝動をどうにか理性でもって押さえていた。掃除機は台所に移動したらしい、床を走る細かな振動が身体をのぼりあがって鼓膜にまで伝わるのだ。無性に腹がたってきた。 「もう、寛太ったら、掃除機は止めてって言ってるじゃないの!」  自分の金切り声でわっと目が開いた。天井板に揺れていた丸い光の玉が、セツ子が動いた僅かな振動で二つにちぎれてゆらりと飛び跳ねて踊った。
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