夏の残り

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 セツ子は六畳間の畳に大の字になって寝ていた。昼間っから飲んだビールの酔いがまわって、ついうとうとと寛太の夢を見ていたのだった。まだ陽は高く時計は二時を廻ったばかりだ。  涙が鼻につんと抜けるしょっぱい痛みをすすりあげて、意味もなく掌を顔の先まで突き出して光の玉に向かってチョキをしてみた。指は光の渦に容赦なく突き刺さる黒いハサミのようだ。透明の光の線を辿ると根源はメダカの水槽…。跳ね返った粒が天井に陽だまりを描いている
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