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 決着は夏祭りで。あの宣言のあとも尾久との細かい勝負に付き合わされる日々が続き。そんなある日。 「ほんと、お前と尾久って仲いいよな」  昼休み。売店で人気のパンをどちらが先に買えるか、なんて小学生みたいな勝負を終えてから。教室に戻った俺にクラスメイトが言った。 「……仲がいいって言うのか、あれ?」  それに対して首を捻りながら、そう答える。 「言うだろ。楽しそうだし」 「楽しそう……ね」  図星を突かれて気恥ずかしさから窓の方へと顔を向ける。自覚はしてても、他人から言われると恥ずかしいものだ。 「でも、どうせなら普通に仲良くもしたいよなぁ……」  流れる雲を眺めながら、思わず漏れる素直な呟き。ハッとして慌てて友人の方を見れば、予想通りニヤニヤと顔がそこにある。 「青春だなー、比良元くん」 「やかましい!」  いかにも面白がるように言うそいつに照れ隠しのヘッドロックを掛けながら、昼休みの時間が過ぎていった。 「夏祭り、もうすぐだな……」  夏休みも迫ってきたある日の放課後。帰りもせずにボーッと外を眺めながら、ポツリと呟く。外からは運動部の活気ある声が聞こえていた。  考えていたのは尾久との約束、夏休み最初の夏祭り。それが終わったあと、今の生活はどうなるのか。そんなことが頭に浮かんでいた。  未だに何に関する決着なのか、わからないまま。それでも夏祭りになれば、それに一区切りが着くのは間違いない。なら、その後は?  ふと浮かんだそんな疑問が頭から離れず、こうして教室で外を眺めていた。 「……まだ帰らないの?」 「うおっ!?」  不意に掛けられた声に驚き、すっとんきょうな声を上げてしまう。慌てて声の主を見ればそこには、いつもとは違う心配そうな顔の尾久がいた。 「おどかすなよ、尾久……どうしたんだ?」 「どうしたはないでしょ、それはこっちのセリフ」  誤魔化すように無愛想に言うと、彼女も口を尖らせ言う。けど、なんとなく安心したようにも見えた。 「ちょっと考え事してただけだ」 「考え事って?」 「あー、別に大したことじゃないって。それよりお前こそどうしたんだよ?」 「勝負しようとしてたのに、比良元くん来ないんだもん」 「なんだそりゃ……」  返ってきた答えに苦笑しながら呆れるように言う俺。 つられて尾久も文句を言いながら笑っていた。
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