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ー6ー
「待ってたよ、比良元くん!」
翌日、まだまだ明るい空の下。祭り会場の広場で俺を出迎えたのは、すっかり聞き慣れた尾久の高らかな声だった。
「元気だな、お前は今日も……」
浴衣姿でビシッとこちらに指を突き付けるいつものポーズを取る尾久に、相変わらずの猛暑でバテ気味の俺は呆れた声を漏らす。
「なになに、お前ら付き合ってんの?」
「香都未ー、どういうことー?」
状況がわからない俺の連れと尾久の連れが、好き勝手に囃し立てるがそれはとりあえず気にせず。
「んで、どうするんだ?」
「五本勝負だよ!」
不敵な笑みを浮かべ問う俺に、やはり不敵な笑みで答える彼女。しかし重要なのはこの次だ。
「それで勝ったら何があるんだ?」
「ふっふっふっ、怖じ気付くなよ。勝った方はなんと! 負けた方に何でも一つだけ言うことを聞かせることが出来ちゃう! どうだ!?」
予想通りの答え。しかもやたらと尾久は自信満々である。となれば、次は。
「オッケー、わかった。で、肝心の勝負内容は?」
と尋ねた瞬間、尾久がピシッと音でも鳴らしそうな感じで固まった。やっぱり、勝負の内容について考えるのを忘れていたようだ。
「……えっと」
ぎこちない笑みを顔に貼り付けたまま、頬にたらりと汗を流して目が泳ぐ尾久。しかし俺は焦らず、言葉を切り出した。
「じゃあ、露店を巡ってそこで勝負ってのはどうだ!?」
「へっ? あー、うん。じゃあ、それで……」
間を置かずに出した提案が意外だったのか、尾久はちょっと驚いたような顔をしながら了承する。
「なら早速、行くぞ!」
「お? お、おー」
落ち着く暇を与えずに促すと、商店街の通りへ向けて足を踏み出した。呆気に取られる尾久はこちらの勢いに飲まれ、戸惑いながらもついて来る。
「……なんなんだ、あれ?」
「……さあ?」
そんな二人のやり取りについてこれないクラスメイトたちの、困惑した言葉が背中に飛んでくるのを気にしないフリをしながら。
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