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沙耶ちゃんの店のドアベルが鳴り
三の狐山、玄翁の修行から戻って来た朋樹が
苛立たし気に
「ボティス、天に潜ったヤツは
まだ戻って来ないのか?」と 聞きながら
カウンターの椅子に座った。
これはまだ、影 動かせてないな...
「まだだ。戻ればアコから、俺に報告が入る」
カウンター席の背後のテーブルで
ボティスは 頬杖をつき、雑誌を見ながら
「焦るな って言ってるだろ。
まあ、見つかって殺られた恐れもあるが」と
言い足し
「泰河」と、オレに空のカップを向けた。
また おかわりか。
キッチンにいる沙耶ちゃんの手を煩わせないよう
ボティスからカップを受け取って、カウンターの中に入ると
「泰河、オレ アイスで」と、朋樹も言うしさ。
まあ、いいけどよ。
四の山、キャンプ場の広場に
月詠命が落ちてきてから 一ヵ月。
光となって消えたサリエルを探している。
地上や地界には いるはずもなく
恐らく、天だろう ってことで
ボティスとマルコシアスが、自分の部下を何人か
天に潜入させた。
サリエルは、元々 天にいるウリエルと
一人の天使だったらしい。
月詠の幽世がある月に
サリエルが支配する界もあるようだが
そっちの捜索は、オレらには どうしようもないので、月詠と、その弟神の須佐之男命に任せて
落ち着かない気分のまま、とりあえず普段通りに仕事をしている。
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