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「ちょっ、タフィ! 今の、ほんとっ?」
――ゴギッ!
取りあえず、最後の一撃を両手でとらさんの胸元に叩き込んでから、タフィに問いかけた。
ゴギッて何かが軋む音と、「うっ!」って声が聞こえてきたけど、気にしない。
「ねぇ、ねぇ! ほんとに、元に戻れるの? どんな方法で?」
演技かもしれないとらさんの唸り声よりも、こっちの質問のほうが大事だもん。
そしたら、服の上からでもそのモフモフ度合いがわかるファニーな両肩を私に掴まれたタフィが、「ふっふっふっ」って蹄を立てて、キランッて笑った。
一拍置いて、その口が開く。
「『キス』だ」
「……へっ?」
「キスするんだよ。葵が、アイツと」
「アイ、ツ……?」
タフィの蹄がゆっくりと動いた先。そこに、私も視線を移す。
いや、もう、このお部屋でその位置にいる人なんて、たったひとりだからわかってたけど。一応。
「……十蔵、さん?」
サラサラの髪からファンシーなケモ耳を覗かせてる着流し姿のイケメンさんの名を呟いた。
マジ? 十蔵さんと私がキスしたら、元の姿に戻れるの?
それ、ほんとにほんと?
「葵は知らないだろうけどさ。オレの住む国では、こういう問題は全部これで解決するんだよ。
オレの友だちのロリーが好きな童話なんて、ラストはコレばっかりだぜ」
はう!
それなら、私もよぉーっく知ってるわ。
メルヘンな童話の王道展開。
どんな難局も、それひとつで強引にハピエンに持ち込めるという、完全ご都合主義のアレのことよねっ。
王子様のキス……!
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