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「ととととっ、とらさん!
どうしよう。ケモ耳なファンシー奥さんでも、ちゃんと好きでいてくれる?
あとあと、このヒツジちゃんとも一緒に暮らしてくれる?
ねぇねぇ! ケモ耳だから離婚するとか言わないでね? お願いよぅ!」
「うおっ!」
ヒツジちゃんを抱っこしたまま、とらさんにぶつかるようにボディーアタックをかました。
ああぁ、ほんとどうしよう。
どういうわけか、お子ちゃまな女子高生の私を好きになってくれた、物好きなとらさんだけど。
このひと、私と出逢う前は、色っぽい芸者さんとばかり浮き名を流してきた、百戦錬磨な色事師なのよ?
そんな、とんでもエロイケメンが、ファンシーなケモ耳女子と普通に夫婦生活してくれるかしら?
まさかとは思うけど、無理って言われたら、どうしよう!
「わぁーん! とらさぁぁん!」
一気に涙が溢れ出してきた。
――――三月。
冬の名残の雪と、ようやく訪れた春を実感させてくれる陽の温もり。
一見、相反するそれらが混在する、早春の朝。
印象派の巨匠が描き出したかのような美しい風景をバックに、モフモフとケモ耳と涙と絶叫とが合わさったカオスなファンタジー世界が、私たちの前に(どういうわけか)突如出現していた。
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