子曰く

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「文庫本じゃないしなぁ」 湊兄ちゃんが同情たっぷりの響きでもって言って、やっとわかった。 ーーお高いんだ。 「ウチの高校は、バイト不可だし。 進学向けの高校なんだから、当然っちゃ当然だけど」 ちらり、例の「頼朝サンバ」の裏を見て、ぞっとする。 二冊買ったら、お小遣いほとんど飛ぶじゃないの。 「とやかく言われず食っていきたいなら、留年やら浪人やらせず、早く社会に出ろ。好きな本くらい、ささっと買える身分になれるぞー」 それは、柏木先輩に言うと同時に、私へも刺さる言葉だ。 「な、ヘリウムと書いた3点?を甘く見る事なかれ、ってぇことだ。柏木の言うことはある意味正しいぞ。 ただ、気にしすぎる必要もない。 そのバランスが難しいんだけどなぁ」 簡単そうに、ちょこっと苦く笑う湊兄ちゃんは、湊兄ちゃんでありながら、ちゃんと桐野先生の顔をしている。 「ってことで、柏木はカウンター業務ヨロシク。 今から入荷本の作業するから」 ペラペラ柏木先輩はいつの間にか復活して、 「分かりました」 と、返事をした。 眼鏡に、復活スイッチも付いてるのかな。
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