0人が本棚に入れています
本棚に追加
「文庫本じゃないしなぁ」
湊兄ちゃんが同情たっぷりの響きでもって言って、やっとわかった。
ーーお高いんだ。
「ウチの高校は、バイト不可だし。
進学向けの高校なんだから、当然っちゃ当然だけど」
ちらり、例の「頼朝サンバ」の裏を見て、ぞっとする。
二冊買ったら、お小遣いほとんど飛ぶじゃないの。
「とやかく言われず食っていきたいなら、留年やら浪人やらせず、早く社会に出ろ。好きな本くらい、ささっと買える身分になれるぞー」
それは、柏木先輩に言うと同時に、私へも刺さる言葉だ。
「な、ヘリウムと書いた3点?を甘く見る事なかれ、ってぇことだ。柏木の言うことはある意味正しいぞ。
ただ、気にしすぎる必要もない。
そのバランスが難しいんだけどなぁ」
簡単そうに、ちょこっと苦く笑う湊兄ちゃんは、湊兄ちゃんでありながら、ちゃんと桐野先生の顔をしている。
「ってことで、柏木はカウンター業務ヨロシク。
今から入荷本の作業するから」
ペラペラ柏木先輩はいつの間にか復活して、
「分かりました」
と、返事をした。
眼鏡に、復活スイッチも付いてるのかな。
最初のコメントを投稿しよう!